

暮らしの中でふと立ち寄れる、
緑とくつろぎの中庭。
新宿駅まで約15分と都心への交通利便性の良さはもちろん、駅前には多数の飲食店やショップが立ち並び、多くの人で賑わう赤羽エリア。最近は、若者やファミリーの住まう場所として人気の街です。
私たちフージャースが赤羽で初めて分譲マンション用地を取得したのが、今回ご紹介する「Duo Veel赤羽(デュオベール アカバネ)」です。建築費が高騰する中、少しでも購入しやすい価格を実現するために、複雑な条件の土地と真摯に向き合い、知恵を絞った物件です。その結果、2015年の土地契約から竣工まで、約8年という歳月がかかりました。ここまで時間をかけた物件は、そう多くはありません。
今回は、「Duo Veel赤羽」(以下、DV赤羽)のプロジェクトストーリーをご紹介します。
赤羽駅 徒歩5分
今回開発したDV赤羽は、赤羽駅東口から徒歩5分。商業エリアから少し離れた閑静な戸建て住宅街の中にあります。その立地の良さに、初めてこの場所を訪れた時から、「この場所なら絶対に良いマンションになる」という自信がありました。
しかし、実際にプロジェクトの検討が始まると、建築基準法の制約により建物の規模が制限され、販売価格が想定よりも高くなってしまう懸念が浮上しました。
また、建物が混み合う住宅地でのマンション計画は、日照、景観、圧迫感などの配慮が必要です。地域の方々に優しく、住まう人にも安らぎを与えられるマンションにするには、設計の工夫が必要でした。
「コストパフォーマンスを叶えながら、お住まいの方だけに限らず、地域の方達の役に立てる物件にできないだろうか」。そんな思いから、今回の計画はスタートしたのです。


土地の良さを最大限活かす
私たちが一番頭を悩ませたのが、敷地の活用方針でした。今回の敷地は、北側に将来道路となる予定の土地が隣接し、東西に細長い形状をしています。通常、敷地面積に応じて建物の大きさが決まるのですが、形状や立地による追加の規制が厳しく、通常よりも小さい建物しか建てられない状況でした。このままでは、販売価格がどうしても高くなってしまいます。
「なんとか、打開策はないのか…」。私たちチームは、建築基準法と向き合うことにしたのです。その結果、2つの方法を見つけました。
1つ目は、敷地をそのまま使わず、2つに分割するという方法です。
通常であれば1つの敷地に1棟の建物を建てます。しかし、今回は敷地を分割し、それぞれに同じデザインの建物を建てることにしました。さらに、2つの建物の間に生まれた空間を仕切ることなく、共有の中庭とすることにしました。
2つ目は、マンション北側の将来道路予定地を接道として活用する方法です。建物を建設する際には、どの道路に隣接しているかでも建てられる建物の大きさが決まります。DV赤羽の北側隣地は、将来的に道路になることが決まっていたものの、計画当時は戸建て住宅が建ち並んでいました。この土地が接道であると行政から認定されれば、敷地面積を最大限に生かしたマンションが建てられることがわかったのです。

8年間に及ぶ一大プロジェクト
私たちが考えた構想は本当に実現できるのか…。1つでも失敗すれば最初から考え直しのこの計画に、私たちは関係者に話を聞きながら丁寧にプロジェクトを進めて行きました。その結果、北側隣地が道路と行政から認められるのに5年はかかるだろうということが分かりました。不確かなことも多く「そんなに時間をかけていいのだろうか?」と思う瞬間もありましたが、より多くの戸数を確保することは、住まう方々のメリットにつながります。また、建物を2棟に分割し、中庭を設けることで、街にとっても良い建物になると判断しました。
建築費が年々高騰している中、行政からの承認を数年待つことに対して、会社からは、もちろん反対の声が上がりました。それでも、私たちの中には絶対の自信がありました。綿密に立てた計画を元に、会社と話し合いを重ね、社内からも承認を得ることができました。
そして6年後の2021年、ようやく行政の承認がおりたのです。

設計の工夫とこだわり
土地の申請を進めるのと同時に、設計も進めていきました。
DV赤羽では、単身世帯向けから家族向けまで、様々な間取りを用意しています。今では当たり前になったテレワークを想定して、建物の共用部にはワークスペースも設けることにしました。
また、2棟の間に生まれた空間には境界を設けず、それぞれの物件にお住まいの皆様が共有する緑豊かな中庭として作り上げました。その中庭が、戸建てが密集する住宅地においては、圧迫感、日照、通風、景観の観点から有効な隙間となり、周辺にお住まいの皆様にもよい効果をもたらすことができました。
将来道路になる予定の北側の土地は、戸建住宅が建ち並んでいますが、道路が完成した時には、この緑豊かな隙間が道路面に現れて、街並みに潤いをもたらすように計画しています。


挑戦し続ける姿勢を忘れない
こうして2023年にDV赤羽は、無事に竣工しました。赤羽という立地の良さと、コストパフォーマンス、デザインなどから、DV赤羽は順調に売れて行きました。
今は、共有部で仕事をする人、中庭でお弁当を食べるお子さん連れのご家族など、それぞれが居心地の良い居場所を見つけて利用してくださっている姿をよく見かけます。今後は、お住まいの方々がゆっくりとつながり合っていくことを期待しています。
2015年に土地を契約してから、約8年。長いプロジェクトが、ようやく終わりました。今回のような物件はそうそうありませんが、今振り返っても、その価格や建物の品質から、5年間土地の承認を待つという決断は、間違ってはいなかったと思います。
承認が降りるまでの緊張感は忘れられませんが、今後も良い物件を届けられるよう、常識を疑い、挑戦する姿勢を忘れないことを学んだプロジェクトでした。

