景色を広げて街を楽しむ自転車を、
暮らしの真ん中に。
私たちフージャースは、人と自転車が中心のまちづくりを考えることにしました。
エネルギーを使わず、空気も汚さない、地球環境に負荷を与えない暮らし方を実現したい。この物件は、そうした思いの中から、自転車好きの人が集まる集合住宅を考えてみよう、と始まった物件です。自転車をきっかけに住人が交流し、自転車のある暮らしがより楽しくなるような集合住宅「自転車と暮らすアパートメント」のプロジェクトストーリーをご紹介します。
自転車のある暮らしプロジェクト
私たちフージャースには「欲しかった暮らしラボ」というウェブ上で開設している研究所があります。社内の様々な部署から横断的にメンバーが加わり、読者の皆さんと一緒に暮らし方について探索しています。
この研究所で生まれたのが「自転車のある暮らしプロジェクト」でした。自転車はこれからのまちづくりを考えた時、低エネルギーで、環境にもやさしく、ヒューマンスケールのまちづくりを可能にする重要なキーワードです。まちの交通渋滞を緩和するだけでなく、人と自然、人と人をつなぐ上でも、また人々の健康の面でも重要です。
そんなまちづくりと並行して、自転車を愛する人が集まる住宅を作れないか。ラボでは実現のために場所を探していました。
自転車と暮らすアパートメント
プロジェクトが走り出した頃、九州支店では福岡で人気の大濠公園エリアのすぐ近く、西新エリアで2つの土地を手に入れました。西新といえば、福岡でも人気のエリアです。だからこそ、街の特徴を活かしてもっと暮らしが楽しくなる賃貸物件にチャレンジしてみたい。コンセプトのヒントを探るため、福岡で活動する人に連絡を取り、1人1人と会って行きました。その中で「自転車」というキーワードにたどり着きます。
福岡の街は非常にコンパクトで、街の中心地も住宅街も、海や山の自然も全てが近い距離に詰まっています。それゆえ自転車で移動をしている人も多く見かけます。街のコンパクトさと、自転車の移動スケールとの相性が非常に良いのです。特に今回プロジェクトを実施する西新エリアは、天神・博多への通勤にも程よく、道路も整備されています。休日には糸島などへ気軽にサイクリングに出かけやすい場所です。
「福岡の街をより魅力的にする、もっと暮らしが楽しくなる"自転車"をコンセプトにしたマンションを作ろう」。ようやく辿り着いた答えと、そしてこれからに私たちの気持ちは高鳴りました。
程なくして社内で進んでいた「自転車のある暮らしプロジェクト」と合流。そして、2つの物件を「デュオフラッツ西新WEST」と「デュオフラッツ西新EAST」と名付け、「自転車と暮らすアパートメント」を作ることにしました。
山田大五朗さん
しかし、私たちの中には自転車に詳しいメンバーはいません。何があれば自転車好きの人に響くのか。そこでプロジェクトの当初にお話を伺った福岡で活動をされている方に相談しました。その時にご紹介いただいたのが「Bike is Life」の山田大五朗さんでした。
大五朗さんは、元MTBクロスカントリーマラソン日本代表選手で、日本でも数えるほどしかいない自転車競技のプロ選手です。引退後は、自転車をもっと身近なものにしたいと「Bike is
Life」というブランドを立ち上げて、オリジナル自転車の製造・販売やクラブハウスの運営、イベントの企画などを行っていました。
今回のプロジェクトの話をすると、大五朗さんからは「自転車は単なる交通手段ではなく、自分の意思で行き先を決め、進み、世界を広げていく相棒のようなもの。その感覚を、1人でも多くの人に届けたいんです。そのためには、暮らしそのものからサポートしたいと思っていました」、と嬉しいお返事をいただきました。
こうして大五朗さんがメンバーに加わり、「Bike is Life」のショップ&カフェ「bil cafe Fukuoka」
がデュオフラッツ西新WESTの1階に入居することが決まります。カフェを訪れることをきっかけに自転車に興味を持ってもらうことが狙いです。ここでは、自転車初心者からサイクリストまで幅広く対応し、情報交換だけでなく、自転車の整備についても気軽に相談することができます。また「Bike
is Life」のオリジナル自転車のサブスクリプションサービスを準備して、いつでも整備された綺麗な自転車に乗れるようにしました。
こうして、様々なレベルのサイクリストの自転車ライフが楽しいものになるように準備を進めました。
自転車を眺める家
大五朗さんがプロジェクトに加わったことで、私たちはサイクリストと話す機会が増えていきました。話すたびに、私たちには気づくことができなかった発見があり、それを物件に一つひとつ落とし込んでいきました。両方の物件の1階に自転車用の洗車スペースを作ったり、自転車をもったまま家に入れるようにエントランスを顔認証の鍵にしたのは、この時の言葉がヒントになっています。この他にも、たくさんのヒントをもらいました。
実際にできた物件では、家の前の廊下を広くとり、自転車を置いて友人と自転車の話ができるようにしました。家の中に入ると大きな土間があり、自転車の整備や練習もできるようになっています。土間なので汚れもキズも気になりません。
また室内には、ビスやフックがつけられるようにアレンジ自由なDIY壁も用意しています。自転車をかけることはもちろん、工具類も壁にかけて使いやすく整理することができます。何より、そういったものが並んだ壁は見ているだけでも心が躍るものです。家の中のどの場所からも、自転車を見ることができるようにもなっています。
ここで少しそれぞれの物件の特徴をご紹介します。
-デュオフラッツ西新WEST
1階には「Bike is Life」のテナント以外にも、入居者専用ラウンジを作って、ランプ※1やZWIFT※2、談話スペースを設けました。住む人たちがライド後にここでくつろいだり、インドアトレーニングをしたり、「Bike is Life」からトレーニングのアドバイスを受けることができます。
※2 ZWIFT:アメリカ発祥のバーチャルサイクリングサービス。美しいグラフィックで描かれた仮想世界の中をサイクリングすることができる。
-デュオフラッツ西新EAST
1階のアプローチを自転車が通れるように幅の広いものにしました。奥に小さな溜まり場を設けてイベントの時の集合場所や友人たちとの待ち合わせとして、会話を楽しめるようにしています。また、壁にはサイクリングマップが設置され、住む人たちの情報交換の場所となるようにしています。
自転車のある暮らしを作る
「自転車のある暮らし」を、どう作っていくのか。物件作りと並行して、私たちが一番知恵を絞ったのはここでした。「もっと、自転車のある暮らしの良さを知ってもらいたい」。
そこで福岡市内で出会ったサイクリストの写真をインスタグラムで発信したり、サイクリストを繋ぐためのトークイベント100人カイギを毎月開催したりと、オンラインとオフラインとで交流を作っていきました。地道に活動を続けることで、徐々にこの活動に興味を持ってくれる人が増えていきました。
100人カイギをきっかけに、「自転車と暮らすアパートメント」の内覧会に20人のサイクリストが一度に来てくれた時には、驚きと嬉しい気持ちでいっぱいになりました。気がつけば、サイクリストと私たちの間で、顔と名前が分かり、お互いを訪ねるまでの関係になっていたのです。
2022年2月に「自転車と暮らすアパートメント」は、入居開始となりました。4月中旬には大五朗さんが主催する自転車のレクチャーイベントが開催されたそうです。まだまだコロナの影響はありますが、入居者同士が少しずつ繋がっているという話も聞いています。
今回のプロジェクトは「自転車のある暮らし」を作ることを起点に、物件につなげていく。そんな一気通貫のプロジェクトでした。これからどんなコミュニティが育っていくのか、見守っていきたいと思います。