完成までのストーリー

未来への多様なアイデアが集まる、
スタートアップの朝。

2022.01

築年数を経た物件に、自分たちの手で付加価値をつけることができるのか。
渋谷駅徒歩10分、築44年の物件で行った一棟丸ごとリノベーション。そして私たちフージャースにとって初めてのシェアオフィス事業。
「Good Morning Building(グッドモーニングビルディング)」のプロジェクトストーリを紹介します。

渋谷駅徒歩10分、
築44年の物件。

2015年の冬、お付き合いのある不動産屋さんから声をかけてもらい、渋谷駅徒歩10分、築44年の物件を紹介してもらいました。現地に行ってみると、住宅専用マンションでしたが、税理士や公認会計士、IT系のベンチャーなど様々なジャンルの法人が入居し、その場所をオフィスとして利用していました。入居率は40%ほどで、半数以上は空いているという状態。普段であれば、渋谷駅徒歩10分という好立地は、購入を検討する企業が多いため購入はしません。しかし、今回は満室稼働していない物件で検討企業も少なかったことや、この物件に出会った時に感じた、ある予感が私たちを動かしました。
「この場所を積極的にオフィスに変えたら、今の入居者さんも、近隣のスタートアップ企業にももっと活用してもらえるのでは。シェアオフィスにするのはどうだろうか?」。
私たちには、この物件が面白くなる予感がありました。とは言っても、私たちはシェアオフィスの企画や運営は初めてですから、出来立てのアイデアを持って、渋谷区を中心にco-baというシェアードワークプレイスを展開していた株式会社ツクルバ(以下、ツクルバ)に相談に行きました。彼らとは以前から交流がありましたが、この物件の隣に彼らのオフィスがあったというのは、今から思うと運命を感じます。

リノベーション前の建物(2016年撮影)

不動産に付加価値を。

少し前のめりにプロジェクトを開始しましたが、前述の通り、これまでの私たちなら、この物件は購入しなかったと思います。それは私たちフージャースが、中古物件を一棟丸ごと購入して事業化する経験が浅く、また築年数を経て入居率が下がっている物件ですから、市場からすれば付加価値をつけることは難しいとされるからです。それを、わざわざ購入しに行くことはありません。しかし、今回は違いました。
当時、私たちフージャースでは収益不動産事業を開始した直後で、その対象となる物件を探していました。これまで新築住宅の分譲を中心に事業を展開してきましたが、住宅に限らずオフィスでもホテルでも、自分たちで中古物件を購入して、自分たちの手で付加価値をつけることに挑戦しようとしていたのです。
そんな時に、この物件に出会いました。社内からは、築年数を経た古い物件の1棟リノベーションにチャレンジすることに対して不安の声もありました。しかし、物件に出会った時に感じた気持ちが忘れられず、ツクルバにプロジェクトの企画・運営に入ってもらい、一緒に社内を説得していきました。

次に行く場所がない。

私たちがこの事業を本格的に開始したのは2016年の春。すでに渋谷界隈はシェアオフィス成長時代で、中小規模の事業者のみならず大手企業からの参入も相次いでいました。そんな中でも、スタートアップ企業の成長に目を向けるとシェアオフィス事業には盲点がありました。
通常、スタートアップ企業は専有スペースがないオープンスペースのシェアオフィスから起業します。それから企業の成長スピードに合わせてヤドカリのようにオフィスを転々としていくのですが、社員数4〜5名の少し成長したスタートアップ企業が入リたくなるような、小規模な個室タイプのシェアオフィスが当時の世の中にはなかったのです。
今回の物件はそこに目をつけて、接客スペースは共用部分、執務は4〜5名ほどが入れる個室にしたシェアオフィスにしました。室内はお手洗いと小さなパントリーだけに割り切り、大きすぎず、小さすぎずの適度な部屋の広さにこだわりました。

1階のラウンジ・ミーティングルーム(2016年撮影)
左:リノベーション前の廊下 
右:リノベーション後の廊下(2016年撮影)

自分たちで作るオフィス。

もう一つこだわったことがあります。それは入居時に家具を置かずに引き渡し、自分たちでオフィスに入れたい家具を選べるようにしたことです。
当時のシェアオフィスは、入居時からオフィス事業者が家具を用意して配置し、「これぞ、オフィス!」といったフォーマット化されたものが多い印象でした。しかし、ここに入居する人たちには「自分たちのオフィスだという愛着を持って欲しい。入居する人のカラーが反映された、ここにしかないシェアオフィスに成長していって欲しい」という強い思いがあり、入居者自ら家具を持ち込み、部屋の中の好きな場所に配置することを可能にしました。
実際にシェアオフィスの運営がスタートすると、スタートアップなので1年足らずと比較的短期間で企業は入れ替わりましたが、前の入居者の家具を大切に引き継いで使ってくれたり、必要なものを足したりと、それぞれの部屋がそれぞれの成長をたどっています。

自分たちの好きな家具を配置できるオフィス(2016年撮影)

スタートアップの朝をもっとGOODに!

こうして2016年11月にシェアオフィス「Good Morning Building」は完成しました。
「Good Morning Building」という名前にした由来は、朝というこれから何が始まるかわからないワクワク感や新鮮さが、自分たちのアイデアに突き動かされて疾走するスタートアップの創業期に似ているところから名付けました。また、スタートアップ企業は比較的若い人が多く夜型になりがちです。けれど人は朝が一番クリエイティブで生産性が高いですから、朝から仕事へ行きたくなるような気持ちにさせたいと思いました。
この他にも、シェアオフィスの中で朝の「おはよう!」が言い合えるような関係性が育まれたらという思いも、この名前には込められています。

今回のプロジェクトは、古い物件ゆえに図面が存在せず、工事中には排水管の工事が難航したり、予算の調整に奔走したりと、築年数を経た物件のリノベーションと向き合う機会にもなりました。途中、集客に苦戦したこともありました。
しかしツクルバのハードに留まらないプランニングにより、この場所でたくさんの交流が生まれるようにと作られたイベントや投資家との交流の仕組みなどもあり、オープン前には満室となりました。その中には、その後この場所を巣立って、様々なところで彼らのプロダクトを見るようになった企業も多数います。非常に感慨深いものです。

1階ラウンジにて行われた「レセプションパーティー」(2016年撮影)

「Good Morning Building」は、2017年10月に独立系ベンチャーキャピタルのANRIに売却されました。元々は、ANRIも入居テナントの1社でしたが、「起業家が集まる物件にしたい」というコンセプトに共感し購入を決めてくれました。現在は、ANRIの投資先の起業や起業前のプロジェクトチームが入居しています。
私たちにとって収益不動産事業開始直後のプロジェクトではありましたが、コミュニティを醸成し、付加価値をつけてANRIにバトンを渡せたことは大きな収穫でした。この事業を通じて低稼働物件に付加価値をつけることに自信を持つことができた、そう言っても過言ではありません。

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