完成までのストーリー

パンとコーヒーを片手に
芝生をかけまわる子どもを、
見守る時間。

2021.06

「公園のある暮らし」をテーマに、2020年11月に竣工したデュオヒルズつくばセンチュリー完成までの道のりは、構想からかぞえると約3年にも及びます。つくばの人たちと街歩きを行って街の魅力を探すことから始まり、竹園西広場公園との出会い、自分たちが目指す「公園のある暮らし」を叶えるためには、行政と民間が官民連携で既存の制度をジャンプすることが必要でした。デュオヒルズつくばセンチュリーのプロジェクトストーリーをご紹介します。

つくば市に合う暮らしとは、
何だろう。

デュオヒルズつくばセンチュリーの話が持ち上がったのは2017年の7月。このあとすぐに、私たちはつくばの人たちと街歩きをして、街の魅力を探ることから始めました。また、ゴミ拾いボランティアのNPO法人グリーンバードつくばにも参加したり、ペデストリアンデッキの活用方法として広場でコーヒーを振る舞うカフェを開いてみたり、多くの人と接点をもっていきました。

つくば街歩きで訪問した「つくいち」(2019年撮影)
つくば街歩きで訪問した「ごきげんキッチン」(2019年撮影)

そうしたなかでいき着いたのが、今回の開発地デュオヒルズつくばセンチュリーの隣にある竹園西広場公園の活用です。つくば市は、市内に202箇所の公園をもつ公園の街です。しかし、その中でも竹園西広場公園の利用率が市内で低いことが気になっていました。そこで、この公園が街の人に使われるにはどうしたら良いかを考えることにしました。これが「公園のある暮らし」の始まりです。

リニューアル前の竹園西広場公園(2018年撮影)

公園が街のリビングに。
南池袋公園との出会い。

公園のある暮らしを考えるにあたっては、もう一つきっかけがありました。それは官民連携で2016年にリニューアルして以来、多くの人で賑わっている東京都豊島区の南池袋公園との出会いです。
青々とした芝生の上に寝転び、くつろぐ家族連れ。敷地内のオープンカフェで美味しそうにサンドウィッチを食べるカップル。初めてその公園を訪れた時には、まるで海外の映像を見ているかのような気持ちになったものです。また、公園のリニューアルによる波及効果で、このエリアの価値が上がり、人気店が周囲に集まってきているという話も聞きました。
「こんな光景を竹園西広場公園にも作りたい」。公園が人の暮らしを、そして街を変えるきっかけになると確信した瞬間でした。

南池袋公園

民間企業が、公共空間の公園に
手を加えることができるのか?

公園のリニューアルを思いつくも、民間企業の私たちが公共空間に手を加えることができるのか。当時の私たちには、全くわかりませんでした。そこで、つくば市に公園のリニューアルの相談に行くことに。
元々、今回の開発にあたりつくば市は、つくばの魅力的かつ特徴的な都市環境を継承するために、既存樹木の保全や周辺と調和したデザインにすること等の要望を、事前に私たちに提示をしていました。
つくば市に、そういった魅力あるまちづくりを実現するための強い思いがあったことから、急な提案ではありましたが、公園再生の提案についても歓迎してくれました。
そこからは実現するための制度を模索したり、市民へのアンケート調査を実施したりと、互いに公園リニューアルのために検討を進めました。そして、相談から1年。2018年の11月につくば市と覚書を締結。民間企業である私たちが、竹園西広場公園のリニューアルをすることが決まったのです。

つくば市の緑豊かな住環境(2018年撮影)

大人も子どもも、居心地の良い
公園を作るために。

今回私たちは、砂利敷だった公園の全面に芝生を敷き、大きな芝生のマウントとそこから滑り降りる滑り台をひとつ作りました。そして隣接地にはベーカリー&カフェを作りました。
公園を作るにあたっては、南池袋公園からの着想もあり、座って、寝転んで、心地よく滞在できるように、全面に芝生を敷くことにしました。そして、使われるシーンを徹底的に考えて、公園をいくつかの空間に分けてデザインすることに。大人も子どもも思い思いに過ごせる芝生広場、小さな子どもが楽しめる滑り台、大人が落ち着いた時間を過ごせるウッドデッキ、自転車やベビーカーが通りやすい園路です。
今では嬉しいことに、私たちが開発当初に思い描いていたような、芝生の上に寝転んで過ごす家族づれや、マウントを駆け上がる子どもの姿などが、当たり前のように見られるようになりました。

完成した公園の様子(2019年撮影)
完成した公園の様子(2021年撮影)

「街の朝食会場を作りたい」
ベーカリー&カフェが
人と人を繋ぐ。

公園計画の当初から、公園で子どもを見守るお母さんの居場所を作るために、敷地内にカフェを作りたいと思っていました。また、市の中心部にはカフェが少なく、道端で立ち話をしている人をよく見かけたこともあります。
「街に愛されるカフェとは何か?」を考えていた時に、つくば市は「パンの街」と呼ばれていることを知りました。そこで、普通のカフェをつくるのではなく、地元の人から愛されるベーカリー&カフェをつくることにしました。今回は、住宅と公園が隣接するロケーションですから、この場所で一緒にコミュニティづくりをしてほしい。その思いに共感してくれた、市内で大変人気のパン屋さん「クーロンヌ」が入ってくれることになりました。
後日談にはなりますが、クーロンヌは普段からテナント出店の依頼が多く、今回の依頼も当初は断るつもりでいたそうです。しかし、会話を進める中で、ただ出店するのではなく、一緒に暮らしを作っていくパートナーとしての参加に興味を持ってもらい出店を決めてくれました。
「毎朝この店を訪れる人たちが挨拶を交わすような、街の朝食会場になりたい」と、
店には、このエリアの地名「竹園」を入れて「Café Boulangerie Takezono」にしました。

完成したCafé Boulangerie Takezono (2021年撮影)

暮らしを未来に繋ぐ
「つくばイクシバ!」
プロジェクト。

今回のプロジェクトでは、マンションだけでなく、公園も手掛けたことにより、街の人も巻き込むものとなりました。そうであれば、入居者だけでなく、街の人たちのコミュニティ醸成や、公園価値の維持も行いたい。そんな思いから、新型コロナウイルスの蔓延前には「芝生ピクニック」や「パークヨガ」などを開催しました。こうした活動を通して、「この公園が愛される理由は、この青々とした芝生があるからでは」と大事なことに気づきました。いつまでも、この青々とした芝生が保たれれば、人はここに癒しを求めにやってきてくれると考えたのです。
そこで東京都中央区で芝生の管理や捕植の活動している「育てる芝生〜イクシバ!プロジェクト〜」という団体に参加させてもらい、芝生の育成を学ぶことに。実際に参加してみると、この芝生の管理がとても楽しいのです。参加者は、活動を通して自然と仲良くなっていき、公園の管理をすることで公園への愛着も湧いていきます。この体験から、私たちも「つくばイクシバ!」という団体を立ち上げ、竹園西広場公園で同じような活動を始めることにしました。
2020年5月から活動はスタートし、今ではマンションの入居者のみならず地域の住民の方や、地元の企業も加わって、少しずつですが活動が賑やかになってきています。

つくばイクシバ!活動の様子 (2020年撮影)
つくばイクシバ!活動の様子 (2021年撮影)

マンションから街へ。
ゆるやかに広がる活動の行く先。

構想から3年、2020年11月にマンション、公園、ベーカリー&カフェの3つが、ようやく全て完成しました。
つくばイクシバ!の活動も、公園を日常的に利用している方々が主体となって芝生の育成を行うことで、公園の美観や利用価値を維持しつつ、活動そのものがゆるやかな地域のコミュニティ形成にもつながっています。
「公園のある暮らし」は、ハードが完成したら終わりではなく、これからが始まりです。当初思い描いていたように、マンションの入居者に限らず、街の人で賑わいを見せるようになってきました。これからもこの暮らしを入居者や街の方々と育てていきながら、私たちが長く関わっているつくばの未来についても、引き続き考えていきたいと思います。

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